うげえ

「それで、話してくれるって言ってたことなんですけど」

「話逸したな」

ははっ、とお姉さんはいつものように快活に笑い、口を開く

「好きな人おるって言うたやん? その人のことやねんけどな」

「手っ取り早く言うけど、もう死んどんねん、そいつ」

「なんつーか病んどったからなあ。死んでもた」

「ここで一緒に暮らしとった。BARはそいつと一緒に初めてんよ」

「親友やったし、同時に恋人やった」

「たったそんだけのありきたりな話や」

「なんで死んじゃったんですか?」

「さあな。遺言はあったけど、ほんまかどうかわからんし」

 

 

「まあ、そいつが言うには、恐かったんやって」

「幸せにできる気がせんって」

「想像つくんかどうか知らんけど、うちもそいつもろくな家庭で育ってないねんよ」

「うちは親からギャクタイ受け取ったし、そいつは親に捨てられてたし」

「16ん時に会って、似たもの同士やからか気が合って」

「2人で金貯めて家借りて、店も出した。けっこう上手く行っとってん」

「あいつはなにが恐かったんやろなあ……

幸せにしてくれんでも、一緒におってくれるだけでよかったんに」

「あいつの保険金でこの家は買い取った。なんか、あいつが帰ってきたらって考えるとな」

「ありえへんのやけど」

「……まだ好きなんですか?」

「どやろな。うち残して勝手に死んだアホやから、

 

 

まだ好きか言われたらそうでもないかもしれん」

「やけど忘れられへんねん。あいつのこと」

それは15歳の俺には身に余る、とても重たい過去だった

「まあ、そういう話。たいしておもろないから話すのは好きちゃうんやけど」

「……君、うちのこと好いとるやろ?」

「…はい」

「やから、君には話とかななって」

「うちを狙ってもいいことないで、ってな」

「……関係ないですよ、そんなこと」

「俺はお姉さんのこと、好きですし」

「お姉さんがこうしていてくれるなら、俺はそれだけで充分です」

「無理やん、それも」